私の似顔絵
(辛亥新春、昭和58年に
描いてもらいました。)
 でんじろうコラムへようこそ。
 
 今年の夏は早い。
 だから、暑い日が多い。暑さにかこつけて、図書館に涼を求めながら、漢字に学び、遊ぶことにしました。
 
漢字の起源をもとめて、徒然に
 
(一)まずは、宮島家の総領が襲名する「傳兵衞」から
 宮島家を辿っていくと、現社長は清一 → 現相談役傳兵衞(襲名前:潤一郎) → 傳兵衞(襲名前:甲子郎) → 徳太郎(襲名せず) → 傳兵衞(襲名前:傳二郎、自ら七世宮島傳兵衞を称す) → 養子 → 清左衛門傳兵衞6代目 → この間4代不明 → 初代宮島傳兵衞(水主町に住み、富田屋と称す)。
 現相談役の傳兵衞の曾祖父が七世宮島傳兵衞、その祖父が宮島家に入籍し、清左衛門傳兵衞までは、はっきりしている。しかし、初代宮島傳兵衞が水主町に移り住み、富田屋と称したと伝えられているが、第6代の清左衛門傳兵衞までの4代は全く不明である。
 宮島はともかく、傳兵衞と命名した由来、エピソードのひとつも残っていない。
 
 さて、傳兵衞の「傳」の字からはじめる。
 傳は、「人」 と 「專(せん)」 からなる。
 人は人間を横からみた形からできた字、「專」という字の意味は、「ふくろの中に物をつめこんだ形」。これを人が背負って運ぶ、これが「傳」であるという。これが、運び傳える、つぎつぎに傳える・・・駅傳のように。
 もう少し、詳しく「專」を分析すると、專の字は袋の上・下それぞれ結んだ形、寸は人の手、という解釈もある。
 「傳」という字は比較的単純な“傳える”という意味だから、傳統、傳承、傳家の宝刀等々、解りやすい。
 伝は略字。自動車を運轉も運転と、略字となったのは、戦後からのような気がするが・・・
 「傅(フ、たすける)」という字は、全然別の字である。
 
 次は「兵」。
 原字は 「斤」 と 「廾」 を、あわせたもの、斤は斧(オノ)、廾は両手、両手で斧をふりあげてたたかっている形。意味は、おわかりのように兵隊さんのこと。
 
 最後は「衛」。
 細かいことだが、通常は「衛」、中央部は韋であるが、宮島家の傳兵衞の「衞」はと書いている。
 まず、「衛」という字の「韋」は城邑(じょうゆう:城壁に囲まれた町)を示す□の周囲を囲む意味。一方、は巡邏警備する意味と若干のずれがあるようだが、いずれにしろ城を衛る、という意味で変わりはない。
 行はご承知の通り、“いく、ゆく、おこなう”の意味。従って、衛は衛兵というようにお城を衛る意味となる。
 
 「兵衛(ひょうえ)」といえば、護衛の兵士のことになるが、国の組織、法制上の官職のひとつにあった。この職制上の兵衛が俗名の一部に使われだしたのが、いつの時代か知る由もない。
 
 冒頭に説明したように、いつの間にか宮島家も約200年、襲名しなかった時期もあっただろうが、続いてきている。宮島なら傳兵衞だと定着していったのだろう。今でも傳二郎である私に、「宮島家の男は全部“傳”がつくのか」と質問され、イヤイヤと手をふりながら、苦笑している。
 ただ、傳兵衞という名前には「傳えて衛る」という意味がある、ことだけは再認識した。
(二)次は、お医者さんの医の字
 医の旧字は「醫」と書く。
 分解すると、 「殹」 と 「酉」 になる。
 「殹は医を毆(う)つ形、矢を呪器としてこれを毆ち、病魔を祓う呪的行為を殴という」
 「酉」はお酒の壷のことでお酒のこと、矢を放って病魔を払う儀式にお酒を用いたのだろうか。お酒の効用にはいろいろの説があるようで、「病を治むるには薬をもって使とす」と酒は補助薬。あるいは古代の酒とは、今のいわゆる酒ではなく「小人の巫からもらう飲みものである」等々、諸説紛々。
 さて、今のお酒は薬になる。健康によいか?
(三)醤油の「」の字源は
 醤油の「」の字は大将の 「」 と 「酉」 の二字から成り立っている。
 さらには、「」は、「爿」と「肉→→爫」と「寸」からなる。
 「爿」は足のある机のこと、その上に羊の肉を切りきざみ(寸)、神に供え、お祈りする。将軍とは、この肉を携えて群を率いる人である。
 「酉」は、醫の酉と同様、お酒をつくる醸造用の容器のこと、これが転じてお酒の意味となっている。
 「」と「酉」をあわせて「」になる。この関係について明確な説明に接したことがない。
 孔子は論語の中で。「・・・・・・なければ食わず」と言っている。この頃からは調味料ではあるのだろうか。詳しくは「113回漢字雑想」をご覧下さい。
 醤油の製造とを業としているものにとって、少々気掛かりを残している。
(四)「熙」
 人の名前で、たまにこの「熙」という字にでくわす
 音はキ、訓はたのしむ、ひろいと読む。字を分解して考えると、 「」 と 「巳」、「」は婦人の乳房、「巳」は幼子の形、「」は婦人が授乳している形で、和楽の意である。
 それに「灬」は、火で燥(かわ)くことだが、この場合は、乾燥の意味でなく、光り輝く意味である。
 従って、「熙」とは、和楽に光明を加えて和平のさまをいう。
 
 私の義兄(姉婿)の名は熙(ひろむ)。温顔、やさしく、包容力あり、尊敬する兄貴だったが、残念ながら、さる6月23日、逝去。
 謹んで、御冥福を祈りながら、このコラムの筆を擱きます。
合掌
参考文献
「角川大字源」 角川書店
「字通」 白川静 平凡社
「新漢和辞典」 大修館書店
「漢字の起源」 加藤常賢 二松学舎大学東洋学研究所別刊第一
「漢和辞典」 旺文社