その1 発がん物質抑制効果
今回は、「味噌の発ガン物質抑制効果」についての研究成果を3つご紹介します。
2003年6月18日(水)の毎日新聞に、「みそ汁を飲むのが1日1杯以下の人で、乳がんを発症した人の割合は年間0.098%だったのに対し、1日3杯以上飲んでいた人は年間0.057%と、発生率は40%低かった。また、豆腐や納豆を毎日食べる人は、食べない人に比べ乳がんの発生率が19%低かった。」という記事が載っていました。
米国立がん研究所誌(電子版)に掲載されたこの研究結果は、90年から10年間、岩手県、秋田県、長野県、沖縄県の4地域に住む40〜59歳の女性2万1852人を対象にした厚生労働省研究班の大規模調査から得られたものです。
大豆には植物性ホルモンの「イソフラボン」が含まれ、これに乳がん防止の効果があるとみられています。研究班が調査結果をもとにイソフラボンの摂取量を計算したところ、1日25mg(複数の大豆食品を毎食食べる)摂取する人は、同7mg(大豆食品をほとんど食べない)の人に比べて発生率が54%低かったという結果が報告されています。
1986年、日本がん学会で、平山雄(ひらやまたけし)先生(当時、国立がんセンター研究所所長・疫学部長)の報告で、味噌汁と発がんの関係の一部が明らかにされました。その報告は、16年間にわたる6つの都道府県に住む40歳以上の男女、26万人の「味噌汁と胃がんの関係」です。
平山先生は、胃がん以外のがんについても、味噌汁をよく飲む人ほど死亡率が低いという調査結果を報告なさっています。
広島大学の原爆放射能医学研究所の伊藤明弘先生は、放射能がヒトや動物に与える影響についての研究を行っています。実験は、マウスを使って、胃がん、大腸がん、肝臓がん、乳がん、甲状腺がんの5種のがんについて、味噌の発がんに対する予防的作用を調べたものです。
5種のがんの中で、最も際立った効果が認められたのは肝臓がんであると報告されています。もともとマウスは、オスとメスではがんの発生率が格段に異なり、オスのほうが圧倒的に高いのです。同様の性差は、人間の肝臓がんでもみられ、C型肝炎ウイルスによるがんも男性のほうが多いとされています。
実験は、オス、メスをそれぞれ4つのグループにわけ、そのうち2つのグループには味噌を10%混ぜた餌を実験前に1〜2週間食べさせておき、他の2つのグループには普通の餌を与えました。
それから13ヵ月後、すべてのマウスを解剖して、各グループごとに肝臓がんにかかったマウスの数を調べました。同じ実験を繰り返してみても、ほぼ同様の結果が出ました。
次の実験としては、飼育しているうちに、自然に肝臓がんが発生するようにつくられたマウスを普通の餌、味噌を混合した餌、醤油を混合した餌の3グループに分けて、肝臓がんの発生率を比べました。やはり、味噌や醤油の肝臓がん抑制効果は明らかでした。
胃がんや大腸がんなどの場合はがんの発生率は多少下がったものの、肝臓がんほどはっきりした成果は得られませんでした。乳がんについては、乳がんのホルモン療法に用いられるタモホシフェンという薬剤と併用すると、薬剤の効果が上がるという実験も行われています。
放射線障害は特殊なもので、一般の人にはあてはまりません。しかし、過度の疲労、ショック、寒冷、酷暑などに対する体の消耗を考えてみると、部分的には、放射線を受けたときと同じ状態だといわれています。そうでなくても、そうした状態において私たちは疲労したり、体調を崩したりすることが少なくありません。こう考えると、味噌汁には「体の病気に対する抵抗力を強くしたり、体力低下を防ぐ効果」があるともいえます。
なお、伊藤先生は味噌の有効成分をビタミン類、酵素、サポニン、ダイゼイン、フラボン体などと指摘なさっています。味噌の効能についてはまだまだ研究途上にあるわけですが、味噌の有効成分とその効能を挙げます。
参考文献 『東畑朝子の体においしいみその本』 
株式会社 マキノ出版
科学のページ「味噌の科学」において、『がん予防と味噌』という記事を掲載しています。こちらからどうぞ→
今回は、味噌の発がん物質抑制効果について調べてみました。もちろん、味噌汁は薬ではないのでがん細胞そのものに対する効果があるとは言い切れませんが、味噌汁を毎日飲むような栄養バランスの整った食生活を送っている人は健康度が高いということはできると思います。
味噌をいろいろな料理に活用して、毎日の健康作りにお役立てください。
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