代表取締役社長 宮島清一
 佐賀県唐津市にある宮島醤油本社の建物は、昭和初期に建てられた木造建築です。応接室に通されたお客様の多くが「何だか落ち着きますねえ」と言われるのは、そこに染み付いた宮島の長い歴史を感じられるからでしょう。その応接室の空気に、凛とした緊張感を与えているものがあります。小笠原長生(おがさわら ながなり)の書額「去華就実(きょかしゅうじつ)」です。小笠原長生は徳川幕府の老中小笠原長行の子であり、最後の唐津藩主小笠原長国の後継者であった方です。宮中顧問官となって昭和天皇の皇太子時代の教育係を務めました。この書額は明治後期、宮島醤油の創業者である七世宮島傳兵衞に対して、長生が戒めとして与えたもので、「為宮島大人 小笠原長生書」と記されています。
 「華を去り実に就く」と読み下します。「表面的なこと、華やかなことを捨てよ。実質あることに専念せよ。」という教えです。この言葉こそ、社是として今も全社員が最も大切にしている、宮島の根本精神です。
 食品会社は、消費者の方々から寄せられる信頼がなければ一日たりとも存続することができません。明治15年(1882年)に創業した宮島醤油が、130年を超える永い歴史を刻むことができたのは、この言葉に込められた質素で誠実な精神が守られ、社風として脈々と伝えられてきたからです。私たちはこれからも、この言葉を何より大切に守ります。