15区  宇都宮~清原工業団地
 
 宇都宮は餃子の町だ。総務省が実施している家計調査によると、一世帯当たりの餃子購入額が宇都宮は日本一だというので、餃子による町おこしが盛んである。家計調査にどれほどの意味があるのか、という議論はさておき、駅前にも駅ビルの中にも餃子専門店が多数あって盛り上がっている。
 JR宇都宮駅西口には、県内で産出する大谷石(おおやいし)製で、全身が餃子の形をした神々しくもおいしそうな餃子の女神像がある。この像はもともと駅東口にあったのだが、東口再開発に伴って数年前に移設されたものだ。実はその際、業者が作業中に像を落として破損させるという失態を演じ、笑ってはいけないが笑ってしまうニュースになっていた。像の足部分を見ると、修復した跡が痛々しい。
   餃子像の左には、同じく大谷石の巨大なガマガエル像があり、宇都宮を訪れた人はみな餃子を食べてカエルように、という市民の熱い願いが込められている(と思う)。それにしても、この二つの像がデッキ下の暗く目立たない場所にあるのは残念であり、遠慮せずに駅正面に堂々と出て欲しいものだ。
 なお昨年(2011年)は、餃子購入日本一の座をライバルである静岡県浜松市に奪われたのだが、それを報じるニュースでインタヴューを受けた浜松市民が、これは震災の影響で宇都宮の消費が伸びなかったのが原因なので喜ぶべきではない、と語っていたのが好印象であった。
 
 駅東口に回ると餃子専門店に付属した庭があって、西口に負けじといろいろな像があるのだが、例えば犬のように見えるが、猫のようでもあり、狸かもしれないトトロなど、どれも明るい脱力感に満ちた優れ物である。
 
 
 駅から東の方角へひたすら進む。工場への通勤で勝手知ったる道なので新たな発見もないまま、鬼怒川(きぬがわ)にかかる柳田大橋を渡る。鬼怒川は、かつては絹川や衣川という表記もあったらしいが、どうして鬼が怒るという激しい名前にしたのだろうか。名前は荒れ狂ったイメージだが、川は今日もいたって穏やかである。岸からずいぶん離れた中州で魚釣りをしている人がいるが、大丈夫だろうか。急に増水したら知らないぞ。
 空気が澄んだ日の会社帰りに、この橋の上から遠く夕日を背にした富士山が見えることがほんのたまにある。地図でここから富士山までの直線距離を測ってみると、174kmあってその距離にあらためて驚く。
 鬼怒川は、ここからほぼ真南に栃木県を縦断し、茨城県を経て利根川と合流して太平洋へと至るのだが、利根川との合流地点(茨城県守谷市と千葉県柏市の境)は私の自宅近くで川沿いのジョギングコースの途中にあたる。したがって、私は工場の近くから自宅の近くまで、車や電車を使わずともゴムボートさえあれば、川下りをして帰宅することができる。しかし翌朝、今度は川をさかのぼって出勤するのは至難の業なので、やめたほうが良かろう。
 
 
 清原工業団地は鬼怒川の東岸、かつては陸軍の飛行場だった広大な台地を開発した工業団地で、現在36社の工場に総計一万人以上の従業員が働いている。整然と区画された団地内には緑も多く、春は花見もできる。そんな団地の北西の端に、2000年に開設した当社の工場がある。
工場団地内の幹線道路の桜並木と、団地内公園の桜(4月13日撮影 七分咲き)
 
 
 いよいよ工場前に到達したのだが、工場外周のフェンス沿いにたんぽぽが咲いている。背の高いセイヨウタンポポが多いなか、地面に這いつくばるようにして咲いているこれは、今や珍しくなった在来種ではないだろうか。けっして派手に背伸びすることなく、地道に生きて小さな花を咲かせているところは、当社の社是「去華就実」そのものである。経営者の言葉がついに敷地内の雑草にまで浸透したかと思うと、感慨深いものがある(考え過ぎ)。
 
 そして、めでたくゴ~~ル。ここが、主にレトルト食品や缶詰などの加工食品を製造している宇都宮工場である。今日は休日なので、従業員から熱烈な歓迎と祝福を受けるという段取りにはならず、静かな工場前で一人寂しくゴールのポーズをとる。
 
 
 これにて、東京から宇都宮工場までを走破するという目的を達成して本企画は終了である。
 と思ったのだが、終わらないでくれ、という声が編集部に殺到しているようなので(うそ)調子に乗って(自分がやりたいだけ)連載を続けることにしよう。
 せっかく日光街道を走ってきたことでもあるし、日光まで走らずしてけっこうと言うなかれ、という有名な言葉(少し違う)もあるので、少なくとも日光までは走らんといかん!
 
2012年5月
 
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