【日光御成道 南行】
26区  和戸~岩槻
 
 本日は東武伊勢崎線の和戸駅から出発。といってもローカルな駅なので、地元の人以外はどこにあるのかさっぱり見当がつかないだろう。埼玉県の東部、とだけ理解していただければけっこうである。ここから東京都へ向かって日光御成道を南へ進む。
 それほど田舎ではなく、かといって都会でもない土地で、自然の雄大な風景があるわけではなく、好奇心をくすぐる商店街があるわけでもないので、文章に書く材料が乏しい。道中には、これまでにも各地で見かけた馬頭観音や青面金剛像がぽつりぽつりと立っているが、何度かここで取り上げたので改めて説明することもないだろう。
 そんな古い石碑も良いが、石材店の敷地内に親子亀、メタボ蛙、読書蛙の石像が鎮座してこちらを向いており、これがなかなか愛嬌があってよろしい。亀は長寿の象徴、蛙は失った物(金)が返る、人が無事に帰る、などの言葉遊びから縁起物に使われているが、読書している蛙はきっと読み蛙(よみがえる)とかけたのだろう。本当か!?
 
 
 白岡市下野田の一里塚を通過する。それほど大きな塚ではなく、車で走れば一瞬で通過してしまって気がつかないほどのものだが、周囲に花が植えられて手入れされているのが気持ち良い。一里塚は一里(約4km)おきに道路の両側に盛土をして木を植え、旅人の旅程の目安となっていたものだが、道路拡張や宅地造成によって片側あるいは両方の塚が消滅していることが多く、両方とも残っているのは、実は珍しい。多くの塚がなくなっているのは寂しいが、私有地であれば、手をつけるなというのも無理な話で、開発されるのはいたしかたない。ここからさらに東京へ近付くと、ますます消滅している可能性が高いだろうから、街道の一里塚はそろそろ見納めになるのかもしれない。
 
 
 出荷時期を逸したのだろうか、収穫されなかった大根が土中から顔をのぞかせ、菜の花に似ているが黄色ではなく白い花を咲かせている。大根の花を見る機会はめったにないので、なるほどこういう花であったか、と観賞する。
 前回も菜の花について書いたが、その続きを書こう。今でこそ菜の花と言えばアブラナ(ナタネ)のことを指すものの、もともとはその字の通り、食べられる菜っ葉に咲いた花を菜の花と総称していたのであって、大根もそのひとつ、分類としてはアブラナ科である。
 野菜が何科の植物であるか、などということは日頃気にすることはなく、また知っておく必要もないのだが、大根だけでなく、白菜、キャベツ、カブ、ブロッコリー、レタス、ミズナ、青梗菜、これらはみんなアブラナ科なのだ。多くは黄色い花を咲かせるのだが、大根の花は白い。なお、「菜の花畑に入日薄れ♪」という唱歌があるが、この作者は信州の人で、歌われているのは野沢菜の花らしい。
 これらの知識は「キャベツにだって花が咲く」という本を参考にしているのだが、この本は取引先の会長さん(当時)からいただいたものだ。ご挨拶に伺った折、日本酒は某一般的なブランドの熱燗がいちばん、という話で意気投合した後、この本はおもしろいと渡されたのだが、ここで得た知識が今拙文を書くにあたって役立っている。私の関心事の方向を見事にとらえられた会長さんの慧眼に感謝したい。
 
 
 犬が大きいものを落とした後は飼い主がちゃんと処理して下さいよ、という趣旨の看板を各地で見かけるが、これは秀逸。あまりのフン害に憤慨しているというから、おそらく自分のものだけでなく、他犬が落していったものまで律義にビニール袋に入れて持ち帰ろうとしている、おりこうさんな犬の図柄である。
 
 
 岩槻(今はさいたま市岩槻区)は、太田道灌とその父道真が築城したと伝えられる岩槻城の城下町である。城跡は公園になっていて、家族連れでにぎわっていたのだが、歴史的な見どころがどこにあるのか発見できず、うろうろと道に迷っただけで退散することになった。見るべきところを予習していないと、こういう失敗をすることになる。そのかわりと言っては何だが、かつて藩校であった遷喬館をゆっくり見させていただく。修復された茅葺の建物の中、ここで当時の若者たちが勉学に励んでいたのですよ、と係員の方に詳しい説明を受けた。
 校の基本方針と言うべきものが漢文調で書かれているのだが、決められた時刻以降は勉強せず、不明な点は翌日に持ち越すべし、とか、多少の飲酒喫煙は可だが騒いではならぬ、とか肩の力が抜けた少々緩い規則に好感が持てる。
 
 
 岩槻は人形の町として有名で、駅前には節句人形の専門店が軒を連ねている。これらの店の繁忙期は3月と5月の節句前だろうが、その時期以外はどんな状況なのだろうか、と余計な御世話でしかない心配をしてしまう。
 遷喬館近くの公園で、人形の町ならではの遊具を発見した。傾斜が緩いのだがすべり台として遊ぶのだろう。題材は、巨大な鯉を相手に尻を突き出して格闘するキンタロー。
 
2013年5月
参考文献 : 「キャベツにだって花が咲く」 稲垣栄洋著 光文社新書
 
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