【醤油の産地へ 東行】
61区  成田湯川~成田
 
 成田スカイアクセス線の成田湯川駅からスタートして成田市街を目指すが、成田と言えば成田山新勝寺が有名だ。正月に大勢の参拝客でにぎわうことと、節分の日に歌舞伎役者や大相撲の横綱が豆まきをすることで報道される観光名所だ。
 うなぎの蒲焼が名物だそうで、門前には、ここへ来てうなぎを食べずに帰ることは許されない、とばかりにうなぎ屋さんが軒を連ねている。店頭では、うなぎが一匹また一匹と、ぬらり、ぐさっ、とんとん、ぶすっ、ぐいっ、しゃりしゃりしゃり、とさばかれている。かつて、うなぎは近くの利根川で獲れたし、醤油の産地である銚子も野田も近いので、遠方から来た参拝客に供する料理として蒲焼が盛んになったらしい。お寺の門前でこんなにも殺生が行われて良いのだろうか、などと堅苦しいことは考えず、せっかくなので食べていこうと思うが、人気店には行列ができている。私は、人気店に入るために行列に並ぶという行為をしたことがない非グルメなので、当然のごとく待たずに座れる店に入る。今や高級料理となった国産上鰻重に肝吸い付、本連載史上最高額の豪華昼食となったのであった。
 うなぎといえば先日、会社で古い倉庫を解体することになったのだが、中から、生きたうなぎを入れておくざる?かご?桶?が多数出てきた。なぜこんなものがあるのかというと、弊社がかつてうなぎを扱う事業にかかわったことがあるからだ。私が着任する前の出来事なので詳しくは知らないのだが、業績はうなぎのぼりとはならず、担当者は責任を取って背開きだか腹開きだかにされた、と語り継がれている。(うそです)
 主に神社で目にする狛犬だが、お寺に鎮座していることも珍しくはなく、ここ成田山新勝寺の広い境内にはいろいろな狛犬がいて狛犬愛好家を楽しませてくれる。狛犬は険しい表情をしているのが普通だが、参道手前の薬師堂に座っている狛犬はやさしい姿で、狛犬というよりペットにしたい犬そのものだ。
 こちらは犬ではなく獅子の姿で、高い岩山の上からにらみをきかせている狛犬。獅子は子を崖下に突き落とし、這い上がってきた子だけを育てるという故事があるが、その通り、ようやく崖の中腹まで登ってきた子獅子がいる。子獅子は、よくもこんなひどい仕打ちを!と非情な親を恨むような厳しい表情をしているが、そんな子に対してなおも威嚇している親の態度はいかがなものか。しつけと称した虐待だ、としかるべき機関へ通報すべき事案に違いない。
 次は金で彩色された狛犬なのだが、“キケン ちかよらないで下さい”と札がかけてある。動物園などで近寄ると危険と書かれている場合、その理由は、一見おとなしそうな馬や羊も不用意に手を伸ばすと噛むとか、イタチ類は強烈な臭い物質をまき散らすとか、サルは汚物をつかんで投げるなどの暴挙に及ぶことがある、などが考えられるが、この場合いったい何がどう危険なのかぜひ教えていただきたいと思う。
 今回はうなぎと狛犬について触れたが、うなぎと犬と言えばこのまったく異種の二生物を融合させた傑作、ウナギイヌを忘れてはならない。赤塚不二夫氏の漫画に登場するキャラクターだが、最近関東地方ではガスを使った節電を広告するキャラクター、電気ウナギイヌと節電気ウナギイヌとして再デビューしている。
 弊社宇都宮工場では、この電気ウナギイヌたちが所属するガス会社の協力を得て、一昨年からガスエンジンによる自家発電を行ない、エネルギーの効率的使用を実現している。
2016年7月
 追記:電気ウナギイヌたちが枕がわりにしているのは、うなぎのグルメ本ではなく、うなぎを題材にした小説を集めた短編集です。どの作品も“ぬるり”とした読後感が味わえるのが不思議でした。
 (浅田次郎選 人情小説集うなぎ ちくま文庫)
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