【醤油の産地へ 東行】
67区  潮来~鹿嶋
 
 平らな関東平野の東南のはしっこを、先月鴨の大群に遭遇した北浦をわたって潮来市から鹿嶋市に入る。
 鹿島灘に面して鹿島臨海工業地帯があり、鹿島神宮があり、Jリーグ鹿島アントラーズのホームタウンなのに、市の名前が“鹿嶋”市なのは、1995年に市制を施行した際に佐賀県鹿島市が既に存在していたので、混乱を避けたため。当時、同じ名前の市が複数あってもいいではないかと思った記憶がある(実際に、府中市は東京都と広島県にある)。
 橋の下では鴨が水面に浮かんでおり、近付くとばたばたと飛んで少し離れた所にすぐ着水する。そう、そもそも鴨という生き物はこれくらいの密度で集まっていて、人が近付くと逃げるものだ。先月のあの喧騒はなんだったのだろうか。
 鹿島神宮にお参りする。先々月の香取神宮もそうだったが、巨木が並び立つ広い森の中にあって歴史の重みを感じる。ところで、そもそも神社と神宮は違うのか。神宮の方が格が上であるという印象はあるのだが、どうなのだろうか。
 神宮とは何か。神宮球場のことでしょ、というスワローズファンの声がまず一つ。それはともかく真面目に調べてみると、もっとも狭義には、三重の伊勢神宮の正式名称が単に神宮であることから、伊勢神宮のみが神宮であるという考え方がある。次に、平安時代の「延喜式」(私はこの文書について知らないので軽々しいことは言えないが、物事の格式を定めたものらしい)によれば、伊勢神宮に加えて、千葉の香取神宮と茨城の鹿島神宮が神宮と記されている。のちに、天皇をまつった奈良の橿原神宮、京都の平安神宮、東京の明治神宮などが神宮とされている。
 その、由緒ある香取神宮と鹿島神宮を前々回と今回で訪ねたわけだが、両神宮にはそれぞれ要石(かなめいし)という石が埋められている。見たところ直径30cm足らずのどうということはない石で、目立つ場所にはなく、わざわざ拝もうという人の目にしか入らないものなのだが、言い伝えによると、地中部はたいへん巨大で掘り出すことができないばかりか、地下に棲んでいるナマズが暴れて地震を起こさぬよう、両神宮の石で押さえつけているのだそうだ。茨城・千葉を震源とする地震はしばしば発生しているが、こんな言い伝えがあること自体、このあたりが昔から地震多発地帯だったことの証だろう。どうか巨大地震が発生しないよう、この石にはまだまだ踏ん張っていただかなければならない。
香取神宮の要石 鹿島神宮の要石
 ところで、要石に通じる参道で奇妙な穴を発見する。周囲を見渡しても人為的に掘られたものと判断する必然性はなく、かといってモグラや蛇などの小動物が這い出した跡とも思えない。考えられる唯一の可能性は、ナマズが呼吸する通気口だ。軽々しく棒を突っ込んだり塞いだりしたら、大災害のきっかけになるに違いない。誰も気づかず放置されているのが幸いだ。
 境内では鹿が飼われている。鹿が身近に見られる場所としては奈良が有名だが、奈良公園の鹿はここから派遣されたのがはじまり、という由緒ある鹿たちだ。また、地元鹿島アントラーズのチーム名は、鹿の角を意味する英語antlerからとっている。
2017年1月
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