【醤油の産地へ 東行】
70区  東庄~神栖
 
 千葉県から利根川をまたいで茨城県神栖(かみす)市に入る。まずは、鹿島臨海工業地帯の真ん中にある港公園展望台に昇って鉄鋼・化学・飼料などの工場群を眺める。鹿島の名が付くこの工業地帯は当然鹿嶋市にあるかと思いきや、たしかに鹿嶋市にも一部かかってはいるのだが、事業所の数からいっても面積においても、中心となっているのは神栖市なのだ。にもかかわらず、神栖市にある工場はおしなべて○○株式会社鹿島工場の名前で操業している。私が前職で勤務していた会社もそうで、神栖市に鹿島工場があった(その後閉鎖・売却している)。なんとも神栖市の存在はないがしろにされているようで、かわいそうだ。そうでなくても、鹿島神宮と鹿島アントラーズを擁する鹿嶋市に知名度で圧倒的に負けている。がんばれ神栖市。
 神栖市役所の職員の間では、きっとこんな会話がされたことだろう。
「なんとかして、我が市の認知度を向上させなければなりません」
「今はやりの、ゆるキャラをつくったらどうでしょうか」
「しかし、これといった特産品も観光地もないので、キャラクターのアイデアが浮かびません」
「ともかく、茨城県のここに神栖市があることをアピールすることが重要だと思います」
「わかった。その方向でキャラクターを考えよう」

という議論を経て(私見です)決定したゆるキャラがこれ、カミスココくんだ。
 自治体が定めたゆるキャラは世にあふれているが、かわいさが微妙だったり、特産品を無理やり擬人化した痛々しいものが多い中で、神栖市はここにあるのだと示すカミスココくんは、その目的が明確であるという点において秀逸だと思う。難点は、矢印を持った左手は常に固定しておかなければならないので、ポーズが限定されることだろう。
カミスココくん
(C)神栖市
 他に県の形をしたキャラクターとしては、千葉県のチーバくんがいる。隣り合った二県だけに、上下に並べると、ぴたりと重なるはずだ。なお、醤油の産地野田はチーバくんの鼻の部分、銚子は耳の先端部分にあたる。私は今、チーバくんの鼻から耳まで頭をなでるように、カミスココくんのあごをなぞるように走っている。
千葉県PRマスコット
キャラクター チーバくん
千葉県許諾 第A1572-1号
 神栖市はカミスココくんが示す通り、利根川と太平洋に挟まれて細長くとび出した、本州の盲腸のような土地だ。いや、すみません神栖市に対して悪意があるわけではありません。本州のとげのような、いや、これではフォローになってないな。角(つの)のような。違うな、角(かど)であることは確かだな。ともかく太平洋に向かってとび出した土地なので、風は強いのだろう。海沿いには地理的条件を生かして、風力発電の風車が並んで回っている。足元には延々と堤防が続いているが、その壁面にはおそらく市民による絵が描かれている。それにしても、まっすぐに続く道路と堤防、空に向かって尖った風車による、ひたすら直線的で固い風景だ。
 東日本大震災では、このあたりにも津波が襲来して工業地帯は被害を受けているのだが、海沿いを走っていてふと不安になる。津波警報が出たら高台へ逃げろ!と言われても、海抜わずか数メートルの平らな土地で、見渡す限り高台も高いビルもない場所ではどうすればよいのだろうか。市の防災対策はかなり難しいのではないだろうか。
 その、本州の盲腸だかとげだか角だか、とにかく本州が太平洋に向かって直角に近く折れ曲がっているこのあたりの沖合では、北からの寒流と南からの暖流がぶつかり合っている。南北それぞれから泳いできた魚たちが集まって、さてここからどこへ行けばよいのやらと迷うところなので、寒暖両方の魚が獲れて漁業が盛んな土地だ。では気候的には寒流のせいで寒いのか、暖流のおかげで暖かいのか、どちらの影響が強いのだろうか。答えは植物の様子を見ればわかる。南国さながらにウチワサボテンの群生地があるし、道路沿いにはアロエが街路樹に負けないくらい繁殖していて、気候は温暖なようだ。
 北関東から流れてきた利根川は、いよいよ太平洋が目前だ。まるで湾のように見える川の向う岸は千葉県銚子市。来月は醤油の産地に入る。
2017年4月
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