走らんか副社長
【番外編(連載121回)】

自粛中 どこまで続くか海の生き物

12.サザエ(栄螺) 貝類

巻貝の姿は美しい。中央部から外側に向かってなだらかな螺旋が伸び、貝の内径が一定の比率で大きくなりながら、それにつれて巻の直径と高さも同じ比率で大きくなってきれいな三角錐を形作っている。さらには、身を守るための蓋も貝の内径に合わせて成長し、ぴたりと閉じて防御は万全だ。

かたくなに殻にこもっているサザエだが、いざ食べる際には蓋の内側の肉に、小さければつまようじ、大きければフォークなどを刺してゆっくり回しながら引くと、なめらかな曲面に沿ってするりと身が出てくる・・・はずなのだが、なかなかうまくいかないのは何故なのだ!!!先っちょで丸まっている部分が苦くておいしいのに、失敗して途中で切れてしまった時の無念さといったらない。

どうしてそんなに殻の中から出たくないのか、と思うが、貝の仲間には自ら進んで脱出した者もいる。カタツムリとして生きることに疑問を感じ、勇気をもって殻を脱ぎ捨てて自由を獲得した偉大なるナメクジの例があるではないか。

巻貝は食べるのが難しいとか面倒だとかぶつぶつ言いながら、ではその欠点が解消されたナメクジについて、食べやすそうでいいね、とけっして思わないのは我ながら勝手なことだ。

サザエといえば漫画サザエさんだが、磯野波平・フネ・サザエという名前は、私などが言うのは僭越極まりないが、秀逸だと思う。磯の風景が目に浮かんでサザエの壺焼きの香りまでが漂ってきそうに感じるし、何よりもサザエが磯に生息していることを単刀直入に表現しているところがすばらしい。ただ、フグ田姓になってしまっているのがなんとも残念なことだ(いや、マス夫さんと結婚したことに文句をつけているわけではないです)。そんな磯野サザエさんにならって、貝の仲間たちをその生息場所にちなんで命名してみよう。岩間アワビさん、砂地アサリさん、川口シジミさんでどうだ。

ここで話はとんでもなくそれるのだが、女優の浜辺美波さんは、磯野家の流れをくみつつも波平を凌駕するいい名前だ、と私は勝手に感心している。もっともご本人は、磯野波平と並べてほめられても、ちっともうれしくないと思うのだが。


13.クロダイ(黒鯛) 魚類

弊社の本社工場には、敷地を横切って小さな川が流れているのだが、そこに鯛が迷い込んできたようで、弊社の公式ツイッター氏が写真を撮ってアップしている。この川はこの後松浦川に合流して唐津湾にそそぐのだが、ここから海までは1km少々ある。満潮に乗って小魚はよく泳いで来ているのだが、これほどの大物が見られるのは珍しい。

この鯛はどうしてここまで来たのか、そして今何を考えているのか、推察してみよう。

①潮の流れに身をまかせ~~て、ぼ~~っとして気付いたら海じゃないところに来てしまった。ここはどこ、私は鯉じゃないよ。

②いい香りに誘われて泳いで来たら、そうか醤油工場だったのか。いっそのこと、どっぷりとこの香りに包まるのもいいと思うので、半身を刺身に、あとの半身と頭は煮付けにしてください。

③海のしょっぱい生活に飽きて冒険の旅に出たところです。私は淡水でも生きていけるのかどうか、自ら鯛験しているところですたい。

2021年5月