走らんか副社長
【番外編(連載122回)】

自粛中 海の生物は続くよどこまでも

14.ナマコ(海鼠) 棘皮動物

姿かたちは悪いが、食べるとこりこりとした食感がおいしいナマコ。食用になっているのはアカナマコやアオナマコで早口言葉になりそうな名前だが、正式名称はマナマコだ。といっても、まな・まこ姉妹のことではない。漢字で書くと”真海鼠“で、海にいるネズミのような生物ということだ。英名はsea cucumberで、こちらは海のキュウリ。たしかにずんぐりむっくりの体形はネズミのようでもあり、ぶつぶつした表面はキュウリのようでもある。個人的には、食べるときに中が空洞になっているので、ちくわに似ていると思う。

ナマコと似た名前のきのこにナメコがある。なめらかなきのこなので“滑子”という字をあてる。クラゲとキクラゲの触感・食感が似ているように、ナマコとナメコも同じようにぬるぬるした触感が似ているが、どちらも海の生物ときのこの組み合わせなのがおもしろい。

また、ナメコと似た名前で、やはりぬるぬるしているなめ茸はきのこの加工品だが、これはナメコではなくエノキタケを煮たもので、もともとはナメコとは似ても似つかぬものが、煮たら似たもので煮たりよったりの煮たものどうしになったものでややややこしい。

ついでに、辞書の並びだとナマコとナメコの間にくるナムコだが、これは食べ物ではなく、ゲームセンターで見かける。


15.シジミ(蜆) 貝類

競走馬の毛色は、日本中央競馬会によると栗毛(明るい茶色)、鹿毛(茶色)など8種類に分類されている。そのうち、芦毛の馬は若いころは黒に近い灰色なのだが、成長するにしたがって灰色が徐々に明るくなり、年を経て引退するころにはほとんど白色に近くなる。私は、すっかり白くなった芦毛馬を見ると「そうか、君もそんな年になったのだなぁ」と、同じくすっかり頭が白くなった自分自身の姿と重ね合わせて、ついつい応援してしまうのである。

今年の競馬界の話題のひとつは、希少な白毛馬が活躍していることだ。だんだん白くなる芦毛馬とは違って、生まれつき真っ白で美しい馬だ。競馬中継に出ている評論家のおっさんでさえ「いやぁ、きれいですねぇ」などと予想そっちのけで見とれるほどだ。それにひきかえ、人の頭が白くなっても誰もほめてくれないのはどうしたものか。

いや、ここでは競馬について書いている場合ではない。シジミだシジミだ。シジミは老化現象の現れ方が芦毛馬や人類とそっくりで、成長すると人と同じように頭が白くなるのだ。いや「はげる」とはっきり表現するのがぴったりだ。シジミの貝殻の表面はコンキオリン層とよばれる黒い皮膜に覆われているのだが、成長とともに皮膜がはがれて下の白い殻が露出するのだそうだ。(参考文献:カイミジンコに聞いたこと 花井哲郎著 中公文庫)

シジミは、淡水と海水が混じり合う汽水域と呼ばれるあたりに生息しているが、流れにもまれて成長するうちに頭が白くなっていくのだ。私もシジミと同様に人生の激しい荒波にもまれて(うそをつけ)成長し(老化が進み、だろ)頭が白くなってしまったのである。

ところで、弊社は“シジミだしつゆ”という商品を「しみじみおいしい」というキャッチコピーで売り出したのだが、残念ながらしみじみ反省するくらい売れなかった。

2021年6月