114区(連載151回) 宇都宮~芳賀~高根沢
最近の副社長は“走らんか!”と言いつつ、どうも走っていないらしい、という噂が広まっているようだ。そんなのは根も葉もない茎と花だけの噂だ、と言いたいところだが、残念ながら当たっている。しかしそんな風評を否定すべく、当社の宇都宮工場がある清原工業団地で開催された第37回宇都宮マラソンに、工場の若手ランナーとともに出場した。
今月は、宇都宮市で開催される二つの行事に当社は協賛していて、一つは11月3~5日に開催された宇都宮餃子祭りで、もう一つがこの宇都宮マラソンだ。宇都宮餃子会のシンボルカラーは黄色、そしてこの8月に開業したばかりの宇都宮の次世代型路面電車も黄色、さらには、宇都宮を本拠地とするプロサッカーの栃木SCもプロバスケットボールの宇都宮ブレックスもユニフォームは黄色、というわけで、メンバーは新調した黄色シャツで出場し、ついでに舞台に上がって当社の社名が書かれた看板の前で記念撮影をした。
大会では無理をせず5kmの部を走ったのだが、1㎞あたり6分以上かかって若かりし頃の走力はどこへやら、年相応の記録でありました。
さて路面電車は、開業前にはLRT(Light Rail Transitの略)と言われることが多かったが、今はライトレール、またはライトライン、いややっぱりLRT、とまだ呼称が定まっていないようだ。ただ、“ライト”という言葉には、雷が多いこの地域を“雷都”と称することにかけた意味が込められている。そのライトレールは、JR宇都宮駅の東口から、ここ清原工業団地を経て芳賀町の工業団地まで伸びているが、宇都宮工場の脇を通っているので、敷地内からも見ることができる。黄色と黒の車体がかっこいいというか、3両編成で“もこもこ”と走るさまがまるでイモムシのようで(失礼!)かわいいのが魅力だ。開業するまでは、いろいろな理由で反対の声も多かったし、試運転中に脱線してケチをつけたりしていたのだが、今のところは利用客が想定を上回っていることもあって、歓迎一色のようだ。
さて宇都宮市の清原工業団地から、ライトレールに沿って芳賀町へ向かって進む。このあたりは、最近の10年ほどで急速に開発が進んだ新興住宅地で、新しい小学校ができているし、近くには一本杉公園という新しい公園も整備されている。その名の通り、大きな杉の木が一本だけそびえているのだが、杉の木を一本植えたのではなく、林を伐採する時に一本だけ残したらこうなった、というのが正しいのだろう。見事な木だし、もとはこの木が目立たないくらいの林だったのだろうな、と思う。
芳賀町は、佐賀県唐津市にも関わりのある画家、青木繁の恋人(子ももうけたが籍は入れていなかったらしい)福田たねの出身地で、2人のロマンを残そうと“ロマンの碑”も設置されていた。いた、と過去形で書かなければならないのは、今年7月に碑が盗難に遭って今はないからで、私も見ていない。おそらく金属目当ての犯行なのだろうが、ロマンも何もない困ったものだ。
芳賀町からさらに北上して高根沢町へと進むと、宮内庁御料牧場の広い敷地が広がっている。栃木県と皇室の関りといえば、那須の御用邸がすぐに思い浮かぶが、この牧場では皇室用の乗馬や、肉・野菜・卵などが生産されているとのこと。数日前には一般に公開された催しが開催された、と地元紙の記事があったが、今日は遠くから眺めるだけだ。
田んぼのあぜ道を進んだところに、幼児用の漢方薬で有名な宇津救命丸の建物があって、こちらが本社だそうだ。門のそばの立派な松の木が見事だが、この会社の創業は1597年というから、なんと400年以上前、関ケ原の戦いもまだこれからという頃なのだ。わが社の歴史はこの半分にも遠く及ばない、まだ若僧だ。
2023年11月