115区(連載152回) 佐野
新潟県の北国街道を進む旅は寒そうだし、雪が積もった道を進むのは難儀なので休止して(なんと軟弱な)、栃木県の全市町を巡る旅、今回は佐野市へと向かう。
佐野は藤原氏がかつて治めていた地で、藤原氏が「私は佐野の藤原なので、これからは略して佐藤と名乗る」と言い出したのが佐藤姓の始まりだとされている(諸説あるようです)。全国の佐藤さんが集まる“佐藤の会”もあって、佐野は佐藤さん発祥の地、としてそれなりに有名になっている。
ということは、阿藤さんとか伊藤さんとか江藤さんとか遠藤さんとか加藤さんとか工藤さんとか古藤さんとか滝藤さんとか武藤さんとかにも、それぞれ発祥の地があるのだろうか。いやそれより佐藤さんのもとになった佐野さんと藤原さんの立場はどうなるのだ。おっと藤さんのことも忘れちゃぁいけないぞ、と疑問は尽きない。
佐野と言えば佐野らーめんが有名なので、本日の昼食はそうする。なお、佐野らーめんの場合はラーメンではなく、ひらがなで書くのが決まりらしい。
目的の店は当社宇都宮工場の社員の弟さんがやっているお店。ありがたいことに、このお店では当社の醤油と味噌を使用していただいている。本日は新メニューとして加わったばかりの期間限定“辛変!宮島味噌らーめん”を注文する。いわゆる佐野らーめんのあっさり醤油味ではないのだが、九州の味噌特有の甘い味噌味が生かされた濃厚なスープで、栃木の地でこの味があじわえることに感謝しながらおいしくいただきました。ありがとう。
佐野には佐野らーめん予備校というのがあって、そこではらーめん店の開業を目指す人に対して、らーめんの作り方のみならず、店舗経営に必要な知識の習得や、後継者がいない店とのマッチング、移住の相談などの支援を行なっているそうだ。らーめんが単にこの地の名物であることにとどまらず、自治体も加わって活性化に取組んでいることがすばらしい、と思う。
実は、この“晴れる屋”さんも店長が予備校を卒業して開業されたお店だ。お昼前に着いた時にはすでに行列ができていて、人気のお店に並ぶという行為をほとんどしたことがない私なのだが、今回は特別だ。今後ともますます繁盛されよう願っています。
かつて藤原氏・佐野氏の居城だった山城は、城の石垣などは残ったまま唐沢山神社になっている。城跡がそのまま神社になった例が他にあるのかどうか、たぶんあるのだろうが思いつかない。
山を登っていくと、なんだか人に慣れた猫がいっぱいいると思ったら、この神社で大切に保護して飼われている猫たちだった。勝手にえさをあげないで、と注意書きがあるが、やはりえさをあげている人がいるのは困ったものだ。
岩山のてっぺんに登ってみると、板状の摂理が盛り上がった岩に松の木が張り付くように育っている。この山ができるに至った地殻変動の大きさと、岩の切れ目に根をおろして育った松の生命力が感じられて、これだけでもここに来た価値があるというものだ。私は、節理・褶曲・隆起といった言葉に接するとわくわくするし、地層・堆積・露頭・段丘というのも好きなのであった。
2023年12月