2020年 新年のごあいさつ

2020年1月1日
宮島醤油株式会社
代表取締役社長 宮島清一


 新元号のもとで迎える初めての新年、明けましておめでとうございます。「令和」という元号は、大宰府の長官をしていた大伴旅人が自宅での宴を詠んだ「初春の令月にして気淑く風和らぎ」(万葉集)からとられたそうです。当時、大伴旅人は唐津を訪れ、その印象を沢山の美しい歌にして万葉集に残しています。「松浦川川の瀬光り鮎釣ると立たせる妹が裳の裾濡れぬ」は私のとても好きな歌です。
 天皇のご譲位は202年ぶりのことで、前回は江戸後期、光格天皇(在位37年)から仁孝天皇(在位29年)へと行われました。お二人とも永く天皇の地位を務められ、和歌など文化を振興されました。人々の生活も安定し、「化政文化」と呼ばれる町人文化が花開きました。今回もそうでありたいと思います。

 弊社は創業から138年を迎えます。永い間、地域の皆さん、消費者の皆さんに守られ、育てられてきたことを改めて自覚し、ますます精進したいと思います。近年の弊社事業の一端をご報告申し上げます。

 1.食品の品質管理と安全管理
 弊社の食品は3つの工場で生産しています。宇都宮工場(栃木県宇都宮市)は2006年、本社工場(佐賀県唐津市)は2012年、妙見工場(佐賀県唐津市)は2016年にSQF(Safe Quality Food)国際認証を取得し、3工場が揃ってSQF認証工場となりました。世界中の皆さんに安全で高品質な食品をお届けする取り組みを、今後も進めてまいります。

 2.脱石油
 食品会社では、加熱調理等に燃料を使います。弊社では二酸化炭素排出量の多い石油から、よりクリーンな天然ガスへの切り替えを進めてまいりました。2012年に本社工場、2015年に宇都宮工場に工業用天然ガスラインを引き、妙見工場には2013年に屋外LNGサテライトステーションを設置することで、3工場へのガス供給インフラを整えました。発電設備としては2015年に宇都宮工場、2017年は妙見工場にガスコージェネレーションシステムを設置しました。こうして弊社は石油を殆ど使わない会社になりました。

 3.環境先進工場の建設
 主力工場である妙見工場を環境先進工場(スマート工場)にする取組みを進めています。2017年にガスコージェネレーション設備の排熱を利用した吸収式冷凍機を新設しました。電気式エアコン61基に制御機器を搭載すると共に、工場全体をカバーするエネルギー計測・制御システムを導入し、きめ細かな省エネ管理を行っています。工場内のすべての蛍光灯と水銀灯を廃すべく、1,163個の照明及び118個の誘導灯を順次LED(Light-Emitting Diode)化しています。2018年には工業用水を工場内で限外濾過して高品質化するシステムを稼働させました。現在建設中の第4工場は無人フォークリフトの運転を前提とした設計です。こうした取り組みにより、環境に配慮しながら高品質の食品を製造する工場として前進しています。

 4.地産地工事業
 地域の第一次産業の産品を域内で消費する「地産地消」には、大きな富を生まないという限界があります。私たちは地域の農水産物を加工して付加価値を高め、域外に幅広く販売することで地域に富を還元する「地産地工」事業に取り組んでいます。2008年より、佐賀県で育てられた農作物、畜産物を使った加工食品「佐賀シリーズ」を製造販売しており、「佐賀しょうゆ」、「佐賀無添加味噌」、「佐賀牛カレープレミアム」、「佐賀県産和牛カレー」などからなります。

地産地工「佐賀シリーズ」商品群

 これらの商品1個の売上ごとに1円を佐賀県に寄付納税し、虹の松原(佐賀県唐津市)の再生・保全に役立てていただいています。また、虹の松原の一画を担当エリアとして受け持ち、2011年より定期的に松葉掻き、除草、清掃を行っています。2018年にはこれらの活動について、環境NPOの方と共に「日本海岸林学会」にて報告する機会を頂きました。

第18回虹の松原の松葉掻き(2019年11月17日)

 5.商品開発
 「佐賀40号」という佐賀県で育種開発された紫黒色の米があります。弊社の「紫黒米酢(しこくまいす)」は契約栽培された佐賀40号を糖化、アルコール発酵、酢酸発酵させた健康酢です。この商品が昨年、「肥満気味の方の内臓脂肪を減らす」機能性表示食品となりました。

内臓脂肪を減らす機能を持つ「ミヤジマ紫黒米酢」(2020年2月発売予定)

岩下食品様(栃木県栃木市)との共同事業で開発した「岩下の新生姜鍋スープ」が昨年、「王様のブランチ」(TBSテレビ)が選定された「2019年激ウマ鍋つゆランキング」で第1位の評価をいただきました。

 6.高校生の教育への支援
 高校生が地元の産物を活かした商品のアイデアを考え、それを商品化して事業化する取り組みを応援しています。佐賀県、福岡県、長崎県、大分県、栃木県の高等学校と協同作業を進めており、この中には2013年に始まった「商業高校フードグランプリ全国大会」で表彰された学校もあります。昨年は栃木県立矢板高校の皆さんによる「やいた黒カレーパン」の開発製造に協力しました。

 7.文化事業
 2017年には大林宣彦監督が第二次世界大戦中の佐賀県唐津市を舞台として制作された映画「花筐/HANAGATAMI」に協力し、2018年には栃木県宇都宮市を舞台に秦建日子監督が制作された映画「キスできる餃子」に協賛しました。映画の公開にあわせて、当社でも餃子を使った新商品を発売し、「餃子の街」宇都宮を盛り上げるため、微力ながらお手伝いしました。
 2011年から行われている「みんなの科学広場in唐津」に毎年参加し、科学の驚きと楽しさを皆さんと共有しています。昨年は「麹(こうじ)を使って絵を描こう!」と題して「麹パワー」を体感していただきました。

第9回みんなの科学広場in唐津(2019年12月8日)

 これからも安全で高品質な食品をお届けし、事業を通じて社会に貢献する企業として前進してまいります。皆様どうぞよろしくお願い申し上げます。