60区 安食~成田湯川
JR成田線の安食(あじき)駅から成田安食バイパスを進むと、やがて人家が途絶えて山の中に入る。“動物注意”の道路標識が立っているが、言うまでもなくこれは人の立場から見た注意書きであって、動物にとってはもっと深刻で危険な状況にある。山中の道路で動物が車にはねられ、歩行者がほとんどいないために人の目に触れることなく放置されるとどうなるか、実はその答を今日見てしまった。それは保健所に通報するよりも、骨格標本として博物館に引き取ってもらったほうが良いのでは、という姿だった。ここにその画像を掲載して皆さんに披露したいところだが、私自身がひぇ~とばかりにスパートして通過してしまい、写真がないのがまことに残念だ。
気を取り直して植物の話題にするが、はて、畑に茂るこの作物は何だろう。花が終わって種ができているが、どうも菜種油の原料として栽培されているナタネではないだろうか。
春、あたり一面を黄色に染める菜の花畑はきれいだなと、私は毎年見ているが、花が散った後どうなっているか、これまで気に留めたことがなかった。それはつまり、私が華やかなものに心を奪われるばかりで、実を成すことの大切さに関心がなかったということに他ならない。
弊社は、社是“去華就実”(華やかなことを取り去り、実質あることに就くこと)をもっとも大切な言葉としているが、私自身この言葉が身についていない未熟者だと菜の花に教えられる。
坂を登り切ったところは、房総風土記の丘として整備された公園が広がっている。100基以上の古墳が残っていて、一つひとつに番号が振られているが、小さなものは土がこんもりと盛り上がっているだけなので、それが古墳なのか、ただの盛り土なのかは正直なところ見ただけではわからない。
その中で一番大きい105号墳は岩屋古墳と名前が付いている。7世紀ごろのもので、底面が正方形をした方墳としては日本最大級なのだが、誰が葬られているのかはわかっていないそうだ。もっとも、奈良や大阪にある天皇陵も、どの天皇がどの古墳に埋葬されているのか諸説あって確定していないものが多いのだから、これもいたしかたない。
“ここは昔の人のお墓なので、登ってはいけません”と看板が立っているのだが、字がほとんど消えかかっていることもあって、頂上までしっかりと道筋がついているのが悲しい。手ごろな高さで、ついつい登りたくなる気持ちもわかるのだが、ばちがあたります。
底面が正方形の四角錐といえばエジプトのピラミッドがそうだが、途中に段があること、頂上が平らなこと、周囲に堀があったことがピラミッドとは異なる。
では、その立体をよりわかりやすく実感するために、カレーライスで再現してみよう。古墳でこーふんカレーの第二弾だ。掘割の水の代わりに使用したのは、弊社が昨年発売した“国産鶏肉と完熟トマトのバターチキンカレー”だ。ほら、まさに古墳の雰囲気そのままですね。
下総松崎(しもうさまんざき)を過ぎて成田へ向かう松崎街道は奇妙にくねくねと曲がり、わざわざいくつかの山を越えて行く。平地を直線で行けば短いし楽なのに、と思うのだが、よくよく考えると、今平地になっているのは印旛沼の一部を干拓してできた土地だ。かつて大きかった沼を避けて道を通すと、山を越えざるを得ないのだ。
ところで、今その印旛沼を守っているのは、いんば沼ご当地ヒーロー“スゴインバー”だ。なんとも、この命名センスはあきれるほどくだらなく、しかし、かみしめればかみしめるほどすばらしい。
2016年6月