68区 香取~小見川
佐原から香取神宮に至る道路を、神宮を通過してそのまま直進すると、やがてちば醤油さんの工場に到着する。ここは工業団地の一画にある比較的新しい工場だが、もともとの創業地は小見川(おみがわ、今は香取市の一部)であり、そこには古い建物が今も残っているらしいので、さらに進む。
小見川市街地の川沿いにその建物はあった。会社沿革によると、前身である大村屋商店が肥前大村藩の融資を受けて1854年に創業した、とある。すでに創業160年以上が経過した老舗だが、意外なところで弊社の地元でもある肥前国の名が登場してきて興味深い。
それにしても、利根川とその支流沿いは川に沿って町が栄えており、かつて利根川の水運がいかに大きな役割を果たしていたのかがよくわかる。どの町にも古い商店街があって、昔ほどの賑わいはないにしろ、今も営業されていることに驚く。
今回は少し車で足を伸ばして、国指定天然記念物の府馬の大楠(ふまのおおくす)を見に行く。“府中競馬のオークス”は毎年ダービーの前週に開催される3歳牝馬のレースだが、“府馬の大楠”は楠の巨木らしい。私のカーナビでは正確な位置がわからなかったので、道路脇で樹木の剪定をしていた男性に道を聞き、さらに道路工事の交通整理をしていた男性にも尋ねたのだが、お二方ともたいへんていねいに教えてくれた。県道から脇道に入る地点がわかりづらく、だからこそていねいに説明されたと思うのだが、その対応ぶりからも、地元の人ならだれでも知っている大切な場所なのだということが感じられた。
樹齢1300年とも1500年とも言われる木で、クスノキとして天然記念物の申請がされたものの、のちに同じクスノキ科のタブノキであることがわかっている。屈曲した幹と枝、地上まで隆起した根、その姿にただただ感嘆する。そして巨木の周りが美しく、近所の方がこまめに手入れされていることがわかるので、それが気持ち良い。
帰りの道路沿いで古墳を見かけたので、古墳好き(最近では、こういう人をコフニストというらしい)としては立ち寄らなければならない。三之分目(さんのわけめ)大塚山古墳といい、全長123m、5世紀前半のものとされる。きれいな前方後円墳で、後円部には石段がついているので上に登ってみる。前方部では、研究員らしき人たちがロープを張って測量しているところだ。
先ほど見た「大楠」といいこの古墳といい、よくぞ今まで残っているものだ。考えてみれば、今から1500年いやもう少し前、この地の支配者なのか高貴な方なのかが亡くなって大きな墳丘がつくられ、手厚く葬られた。その少しあとに、ここからほど近い丘の上に落ちた木の実が芽吹いた。それから数十代にわたってこの地の人たちは古墳を守り、木の成長を見守ってきたのだ。
ところで、古墳には石段があったので躊躇することなく登ったのだが、以前、房総風土記の丘の岩屋古墳にあった「ここは昔の人のお墓なので登ってはいけません」という立札を思い出した。人の墓の上に乗るとは無礼なことで、古墳好きとしてアルマジロの行動だった、いや、あるまじき行為だったと反省している。
2017年2月