77区 浦和~大宮
浦和駅前商店街の雑踏を抜け中山道を進んでいると、露天商のお婆さんに突然呼び止められた気がして立ち止まる。
「ほれっ!わてが掘った芋買うてくれ。かぼちゃもあるよ!」
唐突に迫力満点の像が現れると驚くではないか。どうしてここに芋売りが、と疑問を持つが、ここはかつて市が立っていた場所とのこと。埼玉県では川越の芋が有名だが、浦和もさつまいもの産地だったのでこの像があるのだ。
ところで、芋を手に持って売りつけようとするお婆さんには何と応じたらよいのだろう。英語が通じるとは思えないが、今何時か聞いてみよう。
「掘った芋いじるな(What time is it now)」
さらに街道を進むと“紅赤発祥の地”という説明板がある。紅赤とは染料の一種なのだろうかと思ったら、さつまいもの種類だった。大正時代に“紅赤”という品種が浦和でつくられ、皮が赤くて甘い芋として全国に広まったのだそうだ。その後、“紅あずま”という品種に圧倒されたのだが、最近になって再び見直されているらしい。“紅”と“赤”と同系の字を重ねるくらいだから、さぞ鮮やかな色が印象的なのだろう。
なるほどそうだったのか。サッカーの浦和レッズが名前もチームカラーも赤なのはなぜかと思っていたら、当地発祥の赤い芋が由来だったのか。(そうだったらおもしろいと思ったが、違います)
レッズの名前の由来はともかく、今回のコースは浦和から大宮まで。サッカーの街さいたま市の浦和レッズと大宮アルディージャのホームタウンを進む。
市内にはサッカー関連の旗や像があちらこちらに見られる。北浦和駅近くにあるレッズのマスコット像の横には、長年選手そして監督として活躍した懐かしいブッフバルトの足型がある。大きな体格で屈強だが粗野ではなく、名前のBuchwaldを直訳すると“本の森”という意味だが、その名前にふさわしい知的な雰囲気の選手だった。
浦和と大宮の間は、さいたま新都心という名称で開発が進んでいる。古い街道も道幅の広い道路に整備されていて、ドウダンツツジ(たぶん)の植木が並んでいる。ところが、そのうちの一本の様子がどうもおかしい。ツツジのはずが、とげとげの葉が特徴的なヒイラギに上半分を侵略されている。ツツジの植え込みの中からヒイラギが徐々に枝を伸ばして乗っ取ったようだ。いや、その逆でツツジが下から勢力を伸ばしつつあるのかもしれない。いずれにしても2種盛り合わせのままきれいに剪定されている。季節はもうすぐクリスマス。その装飾にヒイラギはよく使われるので、この季節にはふさわしいとも言える。
大宮という地名は新幹線の駅もあって有名だが、その名前は武蔵国一の宮、氷川神社があることに由来する。さいたま新都心の近代的ビル群を眺め、これから開発されるのであろう広大な空地の脇を通り、巨大なショッピングモールの前を過ぎると、一の鳥居が現れる。ここから神社まで直線約2㎞の参道が始まるのだが、これほど一直線の参道が都市の真中に、しかもケヤキ並木で続いているのは見事だ。この先に神社があるはずだが、遠すぎて見通せない。
お参りは次回にすることにして途中から参道を逸れ、大宮駅に出て今回は終了する。
2017年12月