81区 鴻巣~吹上
前回はひな人形の里としてお祭り真っ最中の鴻巣で終わり、今回は春爛漫になった鴻巣から出発する。花の栽培が盛んな土地だそうで、その土地柄もあるのだろうか、街道沿いは花盛りだ。今年の春は急に暖かくなったので、桜(ソメイヨシノ)はあっという間に咲いて、あっという間に散ってしまったが、春から初夏の花が今いっせいに咲いている。八重桜や、モクレンや、ヤマブキや、白菜などなど。白菜?そう、この季節は畑の片隅や家庭菜園で収穫を免れた野菜たちが、「生き延びたぞ、やった!」とばかりに花を咲かせる季節だ。(今年の冬は野菜の価格が高騰していたので、食べられたほうが喜ばれたのに。)
キャベツや白菜は黄色の、大根は白い花を咲かせる。菜の花の仲間であるアブラナ科の野菜たちの花はどうして白か黄色なのか。そして、その葉を食べ、その蜜を吸うモンシロチョウとモンキチョウが同じく白と黄色なのは偶然なのか、まさか長い年月をかけて植物の色素が蝶に移ったのだろうか。それはないとしても、蝶が自らと同じ色の花の周りを舞っていれば目立たたないので、鳥に捕食されることなく生き延びた、という考え方は正しいのかもしれない。
余談だが、先日米国で量販店に行った際、大根はdaikon radish、白菜は napa cabbage(菜っ葉キャベツ!)という名で売られていて、一人でうけた。
民家のフェンスにからまった“つる”から、紫色の突起がつんつんと出ている。見慣れないもので、何だろうかと思ったのだが、フジのつぼみのようだ。なるほど、我々がフジの花を見るのは、頭上から垂れ下がっているところを見上げるばかりで、藤棚の上に隠れているつぼみを見る機会がない。桜のように、花が咲くのを今か今かとじらすのではなく、準備が整ってから突然姿を現すのがフジの戦略らしいが、今日は演出の裏側を見ることができた。
荒川と利根川を結ぶ武蔵水路の上を通過する。関東平野では古くから川の流路がたびたび変わっており、特に徳川家康の時代以降は大規模な土木工事が繰り返されてきた。それは洪水を防ぐためであり、増え続ける人々の生活用水を確保するためでもあった。これまでも各地でいろいろな水路や、付け替えられた川を見てきたが、これは1965年に完成したもので、さらに最近改修されたらしく新しい。コンクリートで固められて殺風景なのが残念だが、景観や自然よりもこの水路が果たしている機能重視ということで我慢しよう。写真では小さくて見にくいが、ずっと奥のほうに丸い浮きが等間隔に並んで浮かんでいる。これは万一水路に流された人がつかめるように設置されている救命具なのだそうだ。人々の生活を守るだけでなく、おぼれた人の命を救う配慮もされている。
弊社の新商品“かけるスティックカレー”を使った作品を、前々回(アンデス文明)前回(豊臣秀吉)と紹介したが、もう一度だけ挑戦しよう。
この商品はイエローとブラウンの二色があることで表現の幅が拡がるのだが、しょせん二色なので絵を描くには限界がある。では古今東西の名画で、黄色と茶色を主な色彩として描かれたものはあるだろうか。考えるまでもなく、一つの名画が頭に浮かんだ。我ながらこれは名案だと興奮して、ごっほごほとせき込みながらひまわりを描いた。
2018年4月