90区 高崎~群馬八幡
高崎市には何があるのだろうかと情報を集めていて、ふつうの観光案内には載っていないけれど、個人的にここは絶対にはずせないという施設があることを知った。街道から少しそれる場所なのだが行ってみる。
この企画で関東平野を歩き走りしている中で、主に江戸時代以降の治水に関する工夫と技術のすばらしさに触れてたびたび感心しているのだが、ここは長野堰円筒分水という灌漑(かんがい)設備。水を決められた割合で複数の水路に分配するための設備で、簡単に言うと円筒から周囲にあふれる水を、あらかじめ仕切られた区画で受け、それぞれ別の水路へ流すというもの。この構造を文章でわかりやすく表現するのは難しくて、私も現地へ行って見てなるほどこういうことか、と納得したくらいなので、私のつたない説明ではご理解いただけなかったかもしれない。ともかく、これによって農業用水の争奪戦がなくなり、広く平等に水が行き渡るようになったのだ。
昔々考えられた設備が今でもちゃんと現役で活躍している姿が美しい。しかもこれは地面を深く掘って造られた灌漑設備だけに、感慨深いものがある。
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旧中山道にもどって進むと、街道沿いに岡醤油醸造さんがある。明治30年から高崎に店を構えている老舗だが、ここでの製造は中止されて販売のみしておられる。使われなくなったレンガの煙突にはアンテナが設置されているのだが、古いレンガが崩れそうで見るからに危ない。煙突はなかなか風情があっていいのですが、なんとかしたほうがいいと思いますよ。
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上州名物のからっ風に吹かれながら利根川水系の烏川を渡る。先々月には逆方向に渡ったのだから、なんだかわざわざ遠回りをしているようにも思えるのだが愚痴は言うまい。先ほどの長野堰はこの川から水を引いてこの地域一帯の生活を支えているのだ。橋の名前は君が代橋。なぜ橋の名前に君が代なのかと思うが、由来は明治天皇が渡られたことに因む、とのこと。
眺望が開けて遠くに山並みが見えるが、群馬の土地勘がない私には山の名前がわからない。名前だけ知っている山はといえば赤城山、妙義山・・・。後で地図を確認したところ、この方角に見えるのは榛名山らしい。
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本日の終点、JR信越本線群馬八幡駅前に「○○○はやめて早く家に帰りましょう」という立札があるのだが、肝心な部分の字が消えていて判読不能だ。はてさて、何をやめて家に帰るように書いてあったのだろうか。
スペースからいって3文字なのは確かだが、小学生向けなら“あそび”だろうか。“さんぽ”ではないだろう。中高生対象なら“夜遊び”か。社会人が対象なら“居残り”が働き方改革のスローガンとしてぴったりだが、私が日頃心がけていることとして“二次会”を推したい。あるいは、もっと幅広く成人男女向けに人の道を説くならば“駆落ち”とか“逃避行”とかはどうかな。
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2019年2月