走らんか副社長
【中山道 西行】

93区 磯部~西松井田

改元にともなう大型連休のさなか、信越方面へ向かう人々の数はいつもの週末とは一桁違うくらいに多い。皆さんは山だ、温泉だ、テーマパークだ、という目的で出かけられていると察するのだが、私はただ中山道をこま切れに進むことが目的だ。

JR信越本線の磯部温泉駅前にある“温泉マーク発祥の地”については前回書いたが、その碑の裏側に回ると“恐妻碑”なるものがあって“恐妻とは愛妻のいわれなり”と彫られている。そんなことをここで唐突に言われても困ります。いや、べつに困りはしないですし、彫られている言葉にも反論はしませんよ。でもそんな文言がどうして石碑になっているのですか、どうしてここにあるのですか、私が恐妻家だとか愛妻家だとか、そんなことはどうでもいいんですけどね、驚くじゃないですか。


なにも狼狽することはない。落ち着いて中山道に戻り、街道を安中から松井田宿を通過して西松井田を目指す。来週の日曜日が、日本におけるマラソン発祥となった安政遠足(とおあし)を記念したマラソン大会の開催日とあって、沿道には大会ののぼりが立てられて雰囲気を盛り上げている。この大会は記録を競うばかりでなく、速く走ることを捨てた仮装ランナーたちが、その奇抜さと出来栄えを競う大会らしいのだが、ずっと上り坂でけっして楽ではないコースを仮装してよく走れるものだと思う。このあたりの標高はだいたい200mから300mくらいにかけてだらだらと上っている。標高約1200mの碓氷峠はまだまだこれからだ。

特徴的な姿の妙義山が次第に大きく見えるようになってきた。山のてっぺんが妙にギザギザになっているので妙義山と呼ばれるようになったらしい(うそです)。登山をするつもりはないくせに駅で手にとった妙義山登山マップによると、頂上付近の上級登山道では滑落死亡事故が発生、一般登山者は入らないでください、と注意されている。遠くから見ただけでもその険しさはわかる。


群馬県はなぜ群馬なのか。たぶん昔から馬がたくさんいたからなのだろう。群馬県に古墳が多いことは再三書いてきたが、古墳から出土する埴輪には人型のものもあれば馬の形をしたものもある。古墳時代のこの地域における人と馬との深い関わりを示すものと言えるのだが、古代から現代まで、馬は農耕や運搬などの仕事において人の生活を支える重要な役割を担ってきた。今や街中で馬を見かけることはなくなってしまったが、さすが群馬県では主に土木工事の分野で貴重な戦力として今も働いているようだ。

埴輪(人型と馬型)

働くぐんまちゃん

私が埴輪の絵を描くと、どうしてもゆるキャラっぽくなってしまうのだが、最近、縄文の造形から現代のアニメに至る、日本のゆるくかわいい美術史を真面目に論じた本に出会って、私の感じるところは間違っていないのだ、と意を強くしたところだ。(矢島新著 ゆるカワ日本美術史 祥伝社新書)


弊社は群馬県の隣の栃木県宇都宮市に工場がある縁で、宇都宮餃子会とは懇意にさせていただているのだが、同会が発売している公認餃子グッズにこのたび餃子型消しゴムが加わった。文具としての実用性については疑問だが、餃子に群がる馬など(これも消しゴム)とともに記念撮影。

2019年5月

今回の走らんかスポット