121区(連載158回) 那須~那須塩原
仕事がら、栃木県のニュースには敏感になっているのだが、その中でも那須町に関して最近気になったニュースを挙げてみよう。
那須のアルパカ牧場が閉園するそうだ。えっ、失業してしまうアルパカさんたちはこれからどうするのだろう、はたして再就職できるのだろうかと心配したのだが、177頭(そんなにいたんだ!)全員が同じ那須町のりんどう湖ファミリー牧場へ引っ越すことになったそうで一安心。りんどう湖には子供が小さいころ遊びに行ったな。大勢のアルパカさんたちで一気ににぎやかになったことだろうけど、えさ代もたいへんだろうな。
那須町のマウントジーンズスキー場が2024年春までのシーズンを限りに閉場するそうだ。私はスキーをしないのだが(正確には、スキーをしたことはあるが、私にはその才能がないことを早々に自覚したのでそれ以来やっていない)、ここには雪がない季節に遊びに行ったことがある。このように那須町にはいろいろな観光・レジャー施設があるし、美術館や博物館も多数あって一日や二日ではとても遊びきれません。
もっと北へ行けば那須岳があって(那須岳という名前の山はなく、茶臼岳、朝日岳などをひっくるめて那須岳と総称している)、ロープウェイを利用すれば素人でも簡単に高い山に登った気分を味わえる。しかしそれは好天に恵まれた日の話であって、強風が吹くと遮るものがなく、甘くみてはいけない山なのだ。2023年10月には低体温症のため4人がここで命を落としている。
さらには、2017年に雪山登山訓練中だった山岳部の高校生ら8人が雪崩に遭って亡くなった。引率教諭の責任が問われた裁判で2024年6月に実刑判決が言い渡されたが、今も係争中だ。
こうして書くと最近は暗いニュースが多い那須町だが、安全に遊べばいい土地なのだ。リゾートホテルでは、塀の上にいい具合に苔が生えていた。これがなんだと言われると、別になんでもないのだが、こけだ。美しい苔だ。こけにしないで欲しい。
那須町から、隣の那須塩原市へ行く。ここには東北新幹線が停まる那須塩原駅があり、それ以外にもJRの黒磯駅、西那須野駅があって、なんだかここが栃木県北部の中心だからね、と言っているような気がする。
那須塩原市と那須町は、高原リゾートとレジャーでにぎわっているところなのだが、このあたり一帯は明治の初めのころまでは、那須岳から連なるただの荒れた草原(那須野が原)だったのだ。火山からの堆積物で水はけが良く、いや良すぎて川が少ないこの土地に水を引いて開拓しようと、明治の中頃から治水工事が始まった。
明治18年から38年にかけて造られた那須疏水旧取水施設が残っているということを知って、行ってみる。観光客でにぎわう休日なのだが、ここには私たち以外誰もいない。この川から採った水が、那須野が原一帯に供給されて原野を潤し、だからこそ今の発展した那須があるのだ。先人たちの苦労をもっと知らなければならない、と私は思うのでありました。
2024年6月