番外編 カラーラン
ときどき街道をはずれて特別編を書いているが、今回は「第1回カラーラン(The Color Run) at東京ドイツ村」の出場記である。そもそも私は新し物好きなのか、第1回という言葉に弱く、このコーナーでも、第1回ミヤラン(宇都宮環状線一周)、競馬RUN第1回船橋、第1回大井をすでに走っているので、4回目の第1回シリーズである。
カラーランという言葉は初耳だが、アメリカが発祥で、色(Color)をつけられながら走る(Run)というもので、途中で色とりどりの粉をかけられる。ルールは、白い服を着てスタートすることと、思い切り楽しむこと。
会場の東京ドイツ村は千葉県袖ケ浦市にある。東京ディズニーランドの所在地が東京ではなく千葉県だ、というのはかなり有名だと思うが、房総半島の真ん中あたりにあるここも東京とは、遊園地所在地表示法という法律があれば虚偽表示の疑いがかかるところだが、日独友好の大局的見地から、細かいことを言うのはやめよう。
その、東京ではない、もちろんドイツでもない千葉の草原に老若男女が集まり、というか、老1%・若99%の男女が集まった。(ところで私は老・若のどちらに分類されるのだろうか。まことに不本意ながら、老に近い年齢であることを認めざるをえない。)こんな大会にいったい何人が参加するのだ、と思えばなんと7000人を超えるとのこと、いやはや物好きが多いことにあきれる。もっとも、私も車で片道2時間以上かけて参加しているので、人のことをとやかく言う資格はないのだが。
陽気な若者たちのグループに囲まれて、個人参加のおじさんも頑張るのだ。全員お揃いのシャツとヘアバンド姿でスタートする。
5kmのコースの途中に4ヵ所のゲートがあって、それぞれ青・黄・緑・ピンクの粉をかけられ(もしくは自分から浴び)ながら走る。粉は着色したコーンスターチなので、口に入っても無害だがおいしくはないです、と説明されている。
粉まみれになるとカメラがだめになりそうで、走っている最中の写真は撮っておらず、激しく粉が舞う様子をお伝えできないのが残念だが、インターネットで検索すると派手な色合いの楽しそうな写真が出てくる。
はたから見れば、どうしてこんなものが楽しいのだ、と不思議に思われるだろうが、参加して感じたのは、これは日頃服を汚すと親に叱られる子供が、全身真っ黒になって泥遊びをした時に感じる解放感と同じ、ということだ。
服を汚してはならない、というストレスは、大人になってからも続いている。
たとえば某日。買ったばかりのネクタイを着用して出勤し、帰宅した早々にシミがついていることを妻に発見され、厳しい叱責を受ける。昼に食べた醤油ラーメンのスープがはねたのか、はたまた帰りに寄った居酒屋で680円の刺身盛合せを食べた時の醤油が原因なのか。いずれにしろはっきりしているのは、犯人は醤油だということだ。いたずらに家庭の和を乱す醤油が私は憎い。ミートソースよりも、カレーよりも、日本人としてはなによりも醤油が憎い。
話が脱線してしまった。醤油を悪者にしてはならない。とにかく、服を汚してはいけないという強迫観念をずっとかかえている者にとって、汚され放題、自分からも汚し放題、他人の服を汚しても怒られるどころか笑顔を返される、というのはなかなかの快感なのだ。
見よ、全身彩色されてしまった姿と、達成感に満ちた顔を。
この時右手に持っているのは、本日使われた4色のうちの黄色の粉。ゴール後にもこれをかけ合って盛り上がるためのものだったらしいが、持って帰ってきてしまった。
使う機会がない。思いついたのは、黄色がチームカラーである柏レイソルの応援席でぶちまけることだが、サポーターの暴挙として問題になりそうだ。トウモロコシからできたでんぷんなので、料理に使う手はある。しかし、たぶん、捨てる。
2014年4月