走らんか副社長
【番外編(連載109回)】

東京

信州の北国街道を進まなければならないのだが、なかなか行く予定が立てられずにいる。いえ、業務が多忙で休みもとれないというわけではない。ただ、日帰りで行くのはしんどい距離になって、では泊りがけで行くとなると日程を決めるのがそれなりに難しく、しかも雨はいやなのでぎりぎりまで天気予報を気にしているうちに日にちが経過してしまっている。とはいえ、何か書かねばならないという義務感というか強迫観念があるので、今回は昨年走った東京都内のことを、少々日が経ってしまったが書こう。


毎年10月に東京夢舞いマラソンという大会が開かれていて、私はこの10年ほどほぼ毎回出場している。この大会の特徴は時間や順位を競わず、歩道を一般の歩行者のじゃまにならないように走り、混雑している区間は歩くルールでフルマラソンの距離を走る(歩く)というもの。毎年コースが変わるのだが、2019年は翌年に迫った東京オリンピック・パラリンピックの舞台となる施設を巡るコースだった。

ところが、台風の影響で大会は中止になってしまった。コースマップも事前に送られてきていたのに、まことに残念だ。しかし、このまま終わってしまうのはそれこそ残念なので、いただいたコースマップを手に、コースの前半部分だけでも単独で巡ってみた。


まずはJR千駄ヶ谷駅前の東京体育館。オリンピック・パラリンピックの卓球会場となるべく現在改修工事中だが、何だか鎧をまとったような、ダイオウグソクムシを思い起こさせるいかつい姿が柵の向こうに見える。前回の東京オリンピックでも使用され、当時はこんな姿ではなかったと思ったら、1990年に改築されたのだそうだ。

次は先日完成して天皇杯サッカーの決勝が行われたオリンピックスタジアムこと新国立競技場。ここは盛んに報道されているのでパス。

東京体育館

新国立競技場

 
ところで、マラソンと競歩の開催場所が急遽札幌に変更になった。この件については、今ごろなって何言いだすねんあほちゃうか、とか、せやけど選手がへろへろなってぶっ倒れたらえらいこっちゃがな、とか、だいたい8月にやろうっちゅうのがまちごうとんねん、とか、そやそやいっそのこと冬の大会にすりゃええやん、とか、あかんあかん道が凍ってしもたらすってんころりんあいたたたやがな、とか、もろもろ意見が出たけれどとにかく札幌に決まった。

フルマラソン経験者として意見を言えと言われるならば(誰からも言われないが)、私は東京よりずっと涼しいコースでやるアイデアを考えていたのだ。それは箱根の芦ノ湖畔発着の小田原折り返し、つまり正月の箱根駅伝の6区と5区を折り返し走るコースだ。猛スピードで山を下って、しかしさんざん膝に負担がかかった状態で世界のトップランナーたちは山をのぼれるのかどうか、たいへん興味がある。あまり多くの観客が沿道で応援できないのが欠点だが、みんなで優勝タイムを予想すれば盛り上がる。はたしてどんな記録になるだろうか。ちなみに今年の箱根駅伝5区と6区の区間1位記録を足すと41.6kmで2時間7分42秒。42.195kmに換算すると2時間9分30秒ほどになる。アフリカ勢なら平気な顔をしてこれくらいのタイムで走りきるかもしれない。


途中で、移転か存続かでさんざんもめた築地と豊洲を通る。橋を渡る対岸に見える低層の建物が豊洲市場。ところで今年(2020年)はねずみ年だが、築地に住んでいたねずみたちはどうなったのだろうか。放っておくと、餌を失ったねずみたちは築地を退去してから大挙して銀座の飲食店へ向かうと思われ、そうはさせじと大規模な駆除作戦が計画されている、というニュースには接したが、計画が実施されたというニュースは見た記憶がない。夕食時のニュース番組で、今日築地市場跡ではねずみの一斉駆除が行われ、この通りおびただしい数の死骸が死屍累々と重なっています、と鮮明な画像で伝えられたら衝撃的だったのに、と残念に思う。

豊洲市場

今回都内を巡っての一番の驚きは建築中の選手村。“村”という単語から連想するのんびりしたイメージとは全く異なる光景が広がっている。埋立地に突如出現した巨大な近代都市だ。情報によると、14~18階建の建物が21棟建設され、総ベッド数は18,000、いろいろな宗教に対応するために寺院や教会も設けられるとのこと。この光景を見るだけでオリンピック・パラリンピックの開催がいかに国家的な大プロジェクトなのかが視覚的に理解できる。

建築中の選手村

大会終了後は改装してマンションとして一般に発売されるそうだが、わずか1~2ヵ月とはいえ人が居住した部屋なので、中古物件という扱いなのだろうか。どんな価格帯になるのかは知らないが、私は土と自然のないこんなビル群の中では暮らせない。

 


次は、辰巳の国際水泳場のそばに新たに建設中の東京アクアティクスセンター。aquaticsとは聞きなれない言葉だが、競泳・飛込・水球・アーティスティックスイミング(シンクロナイズドスイミングから改称)を含む水上競技の総称とのこと。

東京アクアティクスセンター

ついでなのでaquaticsに関連した英語を調べてみよう。競泳の自由形はfree style、背泳ぎはback stroke、では平泳ぎは・・・breast stroke、直訳すると胸泳ぎ。すると、バタフライを含めた競泳の4種目は背泳ぎ、胸泳ぎ、蝶泳ぎ、自由泳ぎ、としたほうが統一性があるな。ついでにsynchronized swimming改めartistic swimmingは同調泳ぎ改め芸術泳ぎということだが、もはやこうなるとスポーツなのか芸術なのかよくわからない。水球はwater handballかと思ったらwater poloでした。

2020年1月

今回の走らんかスポット