私の似顔絵
(辛亥新春、昭和58年に
描いてもらいました。)

会長コラムへようこそ。

 あけましておめでとうございます。
 今年は子(鼠)の年。、子、丑、寅、卯、、、、と十二支の最初の年です。
 といっても、無限の歳月の流れから考えれば何の意味もないかもしれませんが、限りある人の身になれば、やはり、ひとつの区切りでしょうか。
 ということで、今年も佳い年を―
子の年に想う
鼠にひかれそう
 「あまり、おそくなると『ネズミに引かれるよ』、早く、仕事をすませて帰りなさいよ」
 残業中の女子職員に声をかけて、お先に失礼する。
 翌日、どうも、その意味がよく理解できていなかったようだ。
 「鼠にひかれそう」とは、「家の中でたった一人で淋しい様子のたとえ」と説明したら、納得してくれた。
鼠が塩をひく
 鼠はチュウチュウ鳴きながら、チョロチョロ動きまわることから、よく働くというイメージが生まれるのだろうか。
 「たとえば、大きな倉に100俵の米があった。一粒、また一粒、また・・・と100俵のお米を運び出したそうな」と何度も何度も同じことをくり返し語りかける。
 こんな民話が各地に残っているとのこと。これらを総称して「はてなし話」という。
 一方、少しづつでも蓄めていこう。塵も積もれば山となる、あるいは、愚公山を動かすことと同じ意味で、「鼠が塩をひく」という諺もある。
 チョロチョロ動き、コツコツと努力することから、ネズミ年の人は、勤勉、倹約、貯蓄心に富む、ということになったのでしょうか?
猫に鈴をつける
 身近な動物だった鼠にまつわる諺としては“猫に鈴”が最も親近感がある。
 鼠たちが天敵、猫への対策として、猫に鈴をつけておけば、すぐ逃げることができる。ソーダ、ソーダと全員賛成。
 しかし、さて誰がその猫の首に鈴をつけるか…でハタと困る。ネズミたちの当惑そうな表情がイメージできる。
 人間の社会でも同じようなことが思いあたる。このような諺は、いつの時代にも噛みしめれば、しめるほど味があるものであるものだ。ところが、去年の暮れのテレビで、「遺伝子組換えの研究で猫を恐がらない鼠が生まれた」と、猫の周囲をチョロチョロ駆けめぐる鼠ととまどっている猫を放映していた。オヤオヤ、この諺も使いものにならなくなるかも。
首鼠両端
 キョトキョトと首をふる鼠からの発想だろうか。
 穴から首を出している鼠、出ようか出まいか決めかねている様子をもじって、迷いに迷ってどちらにもつかず、ふた心を抱くことを首鼠両端といっている。「両端」とは、両端を持す、とも言い、中国は前漢時代の故事からでた成語である。
 ちなみに、ふた心(二心)とは、二様の心、うわき心、主君にそむく心、…のこと。現在のわれわれの社会でも、心せねばならぬことでしょう。
鼠算、鼠の子算用(ネノコサンニョウ)
 鼠が繁殖力旺盛であることに因んで、鼠算という計算方法がある。
 ネズミは年に4回出産、一産ごとに6匹産むとすると、
出産 1回  2回  3回  4回
1年目  6匹 ×6 ×6 ×6 =1,296匹…
2年目  1,296匹 ×6 ×6 ×6 =1,679,616匹… となる。
 現実には、寿命、天敵、事故等で計算通りには行かないだろうが、古来からこんな計算を考える人は多かった。
 ネズミ講というのがある。
 会員を鼠算式に拡大させることを条件に加入者に対して加入金額以上に、金銭、その他経済上の利益を与える一種の金融組織。
 いわゆるマルチ商法。投機性が強いので、法律上禁止されている。
 最近もこれに似たような商法が社会的問題になっている。
 以上は計算上そうなるのであって、ネズミさんとはまったく関係ないこと。ネズミも飛んだ濡れ衣を着せられたようなものだ。
マウス
 昭和の初期、まだ小3か小4の頃だろうか。
 夜、寝込んでいると、突然、天井のネズミが走り出し、眼がさめる。あっ、またか…とあきらめ静かになったら再び眠りに入る。
 現在の家屋は、住み心地よく、ネズミが走りまわるなんて、考えられない。今、もっともよく使うネズミに関係するものとしてはパソコンで操作する“マウス”だろう。
どなたの命名かは知らないが、形から可愛い子ネズミのマウスを連想されたのかと思いきや、mouseにはもともと「娘さん、可愛い女の子への愛称」にも使われているという。
 マウスとは「二十日鼠を実験用に飼育した系統のもの」をいう。二十日鼠はネズミの一種、野生種は黒褐色または赤褐色、世界中に分布し、本来は草原性で畑地に多い。
 二十日間で成人(鼠)するから二十日ネズミというのだろうか?
 ご存知の通り、マウスは、今、世界の人が耳目をそばだてている万能細胞の研究、生物学、医学等の実験のため大活躍である。マウスが短期間で成長するため、世代交代が早く、取り扱いやすく、かつ、多量に生産できやすいからだろうか。
 いわば、人間の身代わりになって、いろいろ実験してもらっている。人間として子(ね)年にあたって、とくに厚くお礼申し上げねばならない。
白いネズミ
 しかも、テレビで拝見するマウスは白い。
 古事記によるとスサノオノ命からいじめられているオオクニノヌシノ命が、草原に火を放たれ立往生したとき、白いネズミがあらわれ、内はほら穴、外はすぼんでいる穴にオオクニノヌシノ命を導き、難を逃れる。
 また、七福神のひとり、大黒天の使者として、白いネズミは尊重され、信仰されている。
 こんなことを考えながら、平成20年、子の年を迎えることになりました。
 
 最後に、お正月の頭の体操で“言葉遊び”を楽しんでください。
 子の字を12字、並べると何と読むのでしょう?
   「子子子子子子子子子子子子」
 因みに子という字は、
  子 ネ…ネズミ年のネ と読める
  子 コ…子どものコ と読める
  子 シ…天子のシ と読める
 
こたえ
   ネココネコ シシコシシ
   猫子猫 獅子子獅子
参考文献
広辞苑 岩波書店
四字熟語辞典 岩波書店
動物故事物語 河出書房新社 實吉達郎 著
十二支物語 大修館 諸橋轍次 著
古事記(日本古典文学第1巻) 角川書店 上田正昭、井手至 著
十二支民俗誌 八坂書店 佐藤健一郎、田村善次郎 著