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私の似顔絵
(辛亥新春、昭和58年に
描いてもらいました。) |
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会長コラムへようこそ。
北京オリンピック。
長い、暑かった真夏の夜。
中国は北京でのアスリートたちがくり広げる真摯な戦いに、暑さを忘れて熱中した。
北島選手をはじめとする日本の選手の大活躍に拍手を送る。とりわけ、女性軍の柔道、レスリング、ピンポン、バドミントン、サッカー等々、メダルには届かなかった選手もあったとはいえ、さわやかな感動を呼ぶ。
特に歴史の浅い女子サッカーに惹かれる。
称して“なでしこジャパン”。
ひと息ついて、やまとなでしこのルーツを考える。 |
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撫子 |
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(一)秋の七草、なでしこ |
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“なでしこ(撫子)” 淡いピンクの花、細い茎、深く切り込んだ花びらが風にそよぐ。可憐、思わず撫でたくなるような、かわいい花。 |
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御存知、「秋の七草」のひとつ。 |
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ネーミングのルーツは万葉集、山上憶良である。 |
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山上憶良の秋の野の花を詠める歌 |
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「秋の野に咲きたる花を指(および)折り |
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かき数ふれば七種(くさ)の花」 |
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「萩の花尾花(すすき)葛花撫子の花 |
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女郎花(おみなえし)また藤袴朝顔の花(桔梗)」 |
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〔1537、1538〕 |
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万葉の時代には、“なでしこ”は山野に乱れ咲いていたようだ。 |
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作者不詳の一首 |
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「見わたせば向かいの野辺の撫子の |
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散らまく惜しも 雨な降りそね」 |
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〔1970〕 |
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(見渡すと向こうに見える野辺の撫子、散ってしまうのは惜しい。雨よ降るなよ。) |
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(二)なでしこ、美しい女性 |
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楚々たる風情とかわいらしさを歌に詠みこんだのは、万葉の歌人大伴家持である。万葉集には、なでしこを詠んだ歌は26首、そのうち、家持が11首と多く、自ら種子を蒔き、育てる程、なでしこを愛している。その中の一首。 |
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春の相聞、大伴宿禰(すくね)家持の坂上の大嬢(おおいらつめ)に贈りし歌一首 |
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「我がやどに蒔きしなでしこいつしかも |
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花に咲きなむなそへつつ見む」 |
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〔1448〕 |
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(わが家の庭に種を蒔いたなでしこは、いつになったら花が咲くのだろうか。それをあなたとおもってみよう。) |
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すでに万葉の頃から、前栽(庭の植え込み)に、いろいろの草花を植え、“ガーデニング”がはじまっている。 |
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家持が遠い越の国に派遣されたとき、「・・・・・・心なぐさになでしこを宿に蒔き、・・・・・・百合引き植ゑて咲く花・・・・・・」を待ちつつ、鄙(田舎)の日々を過した短歌もある。 |
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(三)枕の草子 草の花(六十五) |
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「草の花は 撫子 唐(から)のはさらなり。 大和(やまと)のもいとめでたし。 女郎花 桔梗 ・・・・・・」 |
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(草の花はなでしこ。唐のは言うまでもなく、大和のもたいへんすばらしい。女郎花・・・・・・) |
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平安時代に入り、渡来した、「石竹(せきちく)」は唐撫子(からなでしこ)と呼ばれ。万葉に歌われているなでしこは、河原撫子(かわらなでしこ)、大和撫子(やまとなでしこ)と呼ばれている。 |
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石竹 |
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源氏物語「玉鬘(たまかずら)」の巻に、源氏が玉鬘の部屋を訪ねる。「前には乱りがわしき前栽など植えず、撫子の色を整えたる、唐撫子や大和撫子の美しい色合をしているのを笆垣を風流に結うてゐる」と、平安貴族は、早くから優雅なガーデニングを楽しんでいたようだ。 |
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(四)大和撫子、益荒男 |
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古くは万葉集、源氏物語頃、思わず撫でたくなるようなかわいい花、なでしこを愛しい子、愛する人、美しい女性になぞらえて詠むのが約束のようになり、愛情の表現、告白に使われ、秋の草花の女王のような存在になっていく。 |
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草花としてのなでしこは、徳川時代、平和な時代でもあり、史上空前の「園芸ブーム」、なでしこもまた、鑑賞の対象となり、品種改良も進む。 |
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明治時代も引き続き、伊勢、京都等で広く栽培されていたが、太平洋戦争時に壊滅し、数百種あったなでしこも現在では数少なくなっていると云われ、自生のなでしこに接することもなくなっている。 |
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現在、“やまとなでしこ”の女性像は?と問われると、才色兼備に芯の強さ、日本古来の情緒が漂う女性像が浮かんでくる。 |
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広辞苑は「日本女性の尊称」と定義する。 |
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さて、日本女性はやまとなでしこ。 対する日本男児はますらお(益荒男)と称する。「ますは増、らは接尾語、男性的で立派な男」の意。文武両道に長じ、六分の侠気、四分の熱ある男か? |
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花屋さんの陳列棚になでしこの種子が眼についた。思わず購入。すぐに会社の花園に種蒔き。来年の春を楽しみに! |
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参考文献 |
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鑑賞日本古典文学第3巻 万葉集 中西進編 角川書店 |
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鑑賞日本古典文学第8巻 枕草子 石川穣二編 角川書店 |
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源氏物語3巻 谷崎潤一郎訳 中央公論社 |
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俳句の花図鑑 監修 復本一郎 成美堂出版 |
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美人の日本語 山下景子 幻冬舎 |
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広辞苑 |
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